函館元町の裏通り――観光客が素通りする西部地区の本当の魅力
2026-05-08·10 分で読める
# 函館元町の裏通り――観光客が素通りする西部地区の本当の魅力
八幡坂で写真を撮って、教会群を見上げて、ロープウェイに乗って帰る。函館西部地区を訪れる観光客の9割が、たぶんこのルートをたどります。でも、この街の本当の表情は、その「定番ルート」の一歩外側にあるんです。私は西部地区の近くに5年住んでいますが、いまだに新しい路地を見つけるたびに心が躍ります。この記事では、ガイドブックが教えてくれない元町の奥深さを、できるだけ具体的にお伝えします。
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## 大三坂・チャチャ登りの先へ――観光客が引き返すポイントからが本番
大三坂を上りきり、チャチャ登りで有名な教会の三重奏を写真に収めたら、ほとんどの人はそこでUターンします。でも、そのまま函館山方面へさらに5分歩いてみてください。観光客の姿がふっと消え、明治〜大正期の和洋折衷住宅が静かに並ぶ生活の通りに出ます。特に常盤坂の上部から旧函館区公会堂の裏手にかけては、苔むした石垣と古い板塀が続き、まるで時間が止まったような空間です。途中、元町配水場の裏側に出ると、港と街並みを一望できる隠れたビューポイントがあります。ベンチもなく柵があるだけの場所ですが、八幡坂より人がいない分、函館山と港の景色を独り占めできます。
> **地元の豆知識:** 元町配水場は春になると敷地内の桜が見事ですが、実は**8月〜10月の平日限定で敷地内を無料開放**しているのはあまり知られていません。水道局に事前確認すると確実です。
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## 築100年超の古民家に静かに灯る路地裏カフェ3選
西部地区には、古い建物をそのまま活かしたカフェが点在しています。観光通りから一本入るだけで、まったく違う時間の流れに出会えます。
**1. 茶房 旧茶屋亭(大三坂沿い)**
大正時代の蔵を改装した空間。名物のクリームあんみつ(750円)は地元リピーター多数。2階の窓から坂を見下ろす席が特等席です。
**2. ティーショップ 夕日(船見町エリア)**
築100年以上の民家を改装。紅茶とスコーンのセット(900円前後)が定番。営業日が不定期なので、SNSで事前確認を。観光客はほぼ来ません。
**3. cafe D'ici(弥生坂周辺)**
こぢんまりとした一軒家カフェ。自家製チーズケーキ(500円)とハンドドリップコーヒー(450円)の組み合わせが秀逸。英語メニューはありませんが、店主はとても親切です。
> **裏技:** どの店も席数が5〜15席程度。平日14時台が最も空いています。週末は地元客も来るので、開店直後を狙うのがおすすめです。
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## 地元の人だけが知る船見坂〜幸坂エリアの夕暮れ散歩ルート
西部地区で夕暮れを楽しむなら、八幡坂ではなく**船見坂から幸坂へ抜けるルート**を歩いてみてください。所要時間は約40分、距離にして1.5kmほどです。
出発点は函館西高校の近く、船見坂の上部。ここから坂を下りながら外国人墓地方面に向かい、途中で右に折れて住宅街の細い道を入ります。古い石畳の残る路地を抜けると、幸坂の中腹に出ます。この幸坂の中腹から見る夕暮れの港は、西日が海面をオレンジに染め、係留された漁船のシルエットが浮かび上がる絶景です。10月〜2月は日没が早いので16時前にスタートするのがベスト。夏場は18時半頃からがちょうどいいタイミングです。このルートは街灯が少ない区間があるため、日没後30分以内には大通りに戻ることをおすすめします。
> **地元の豆知識:** 幸坂は映画やCMのロケ地として密かに使われることがあり、地元では「函館で一番フォトジェニックなのに一番無名な坂」と呼ぶ人もいます。
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## 元町の住人に聞いた「観光客に教えたくない」お気に入りスポット
西部地区に30年以上住む知人数人に「本当は教えたくない場所」を聞きました。怒られそうですが、少しだけ共有します。
**旧函館博物館1号(函館公園内)**——明治12年に建てられた、北海道最古の博物館建築です。函館公園自体が観光ルートから外れがちですが、この小さな洋館の佇まいは元町のどの有名建築にも負けません。入場無料なのに、いつ行ってもほぼ無人。
**弥生小学校裏の高台**——学校の裏手にまわると、港に向かって視界が一気に開ける場所があります。ここは地元の人が犬の散歩で立ち寄るような何気ない場所ですが、函館山と市街地と海を一枚の絵のように見渡せます。Googleマップにはまず出てきません。
**護国神社の裏参道**——表参道ではなく、脇の細い階段を上るルート。苔むした石段と木漏れ日が美しく、特に早朝は神聖な空気に包まれます。
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## 西部地区を歩くための実践ガイド――坂道の靴選びと季節別ベスト時間帯
最後に、西部地区を本気で歩くための実用的なアドバイスをまとめます。
**靴選び**は最重要事項です。元町の坂はアスファルトだけでなく、石畳や古いコンクリートが混在しており、雨の日は本当に滑ります。ヒールは論外、フラットなスニーカーか、できればグリップ力のあるトレッキングシューズが理想。冬場(12〜3月)は路面が凍結するため、靴底に装着する**滑り止めスパイク(コンビニで500〜800円程度)**が必須です。
**季節別ベスト時間帯:**
- **春(4〜5月):** 午前10時〜13時。桜と古い建物の組み合わせが映える
- **夏(6〜8月):** 朝7時台 or 夕方17時以降。日中は坂道で体力を消耗します
- **秋(9〜11月):** 15時〜日没。西日に照らされる洋館群が最も美しい季節
- **冬(12〜3月):** 正午前後の2時間に集中。日が短く路面も危険なので無理は禁物
> **裏技:** 函館駅前や五稜郭で売っている「市電1日乗車券」(600円)を買えば、西部地区の入口(末広町・十字街電停)まで楽にアクセスでき、疲れたらすぐ市電で戻れます。坂を歩く体力を温存する賢い移動手段です。
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定番の観光スポットがつまらないとは言いません。でも、もしあなたが函館に2日以上滞在するなら、半日だけでいいので、地図を閉じて西部地区の路地に迷い込んでみてください。この街は、迷った人にだけ本当の顔を見せてくれます。