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きくよ食堂|函館朝市で地元民が68年通い続ける海鮮丼の正体

2026-05-08·10 分で読める
きくよ食堂|函館朝市で地元民が68年通い続ける海鮮丼の正体

# きくよ食堂|函館朝市で地元民が68年通い続ける海鮮丼の正体

函館朝市の開場と同時に漂い始める、醤油と炭火と潮の混じった匂い。その中心に、1956年から変わらず湯気を上げ続ける食堂があります。観光ガイドに載るずっと前から、ここは市場で働く人たちの「朝の台所」でした。

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## 観光名所になる前から市場の胃袋だった|きくよ食堂の68年史

きくよ食堂の創業は1956年。函館朝市そのものが、引揚者たちの闇市から正式な市場へと姿を変えていった時代です。初代の店主が市場の仲買人や漁師たちに朝飯を出し始めたのが原点で、当時のメニューは焼き魚定食や味噌汁といった素朴なものでした。海鮮丼が看板になるのは、もっと後の話です。

現在は本店と支店の2店舗体制。函館朝市のどんぶり横丁市場内にある支店と、朝市広場に面した本店があります。本店は1階がお土産販売、2階が食堂という構造で、観光客の多くが訪れるのはこちらです。ただ、地元の常連は支店のカウンターに黙って座ることが多い。理由は単純で、「近いし、空いてるし、同じ味だから」。68年という時間は、函館の食文化そのものの年輪でもあります。

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## 地元民は何を頼むのか|巴丼だけじゃない常連の注文パターン

ガイドブックを開けば、必ず「巴丼(ともえどん)」が推されています。うに・いくら・ホタテの三色丼で、価格は約2,980円(税込・時価変動あり)。たしかに華やかで写真映えもする。でも地元民の注文は少し違います。

常連がよく頼むのは、実は「イカ刺し定食」や「焼き魚定食」(各1,200〜1,500円前後)。朝から丼を食べるのは観光モードの胃袋であって、毎週通う人間はご飯・味噌汁・焼き魚という構成に落ち着くのです。もう一つの隠れた人気は「ミニ海鮮丼+味噌汁セット」。サイズが小さい分、朝の胃にちょうどいい。

> **地元の豆知識:** 味噌汁を「カニ汁」に変更できます(+数百円)。この変更を知っているかどうかで、食堂での満足度がまるで変わります。カニの出汁が沁みた汁は、それだけで函館に来た価値があると言える一杯です。

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## 朝6時台の空気感|観光客が来る前の市場と食堂のリアル

午前6時、函館朝市の公式な開場時間です。きくよ食堂も朝5時台から準備を始め、6時にはもう暖簾が出ています。この時間帯の市場には、独特の緊張感があります。ターレ(小型運搬車)が通路を行き交い、発泡スチロールの箱が積み上げられ、仲買人たちが値踏みの目で魚を見つめている。観光地の顔はまだどこにもありません。

6時台のきくよ食堂には、市場関係者や近隣の宿の漁師、早起きの地元高齢者がぽつぽつと座っています。会話は少なく、テレビの天気予報だけが流れている。この静けさが7時半を過ぎると一変します。JR函館駅からの徒歩客やホテルの朝食代わりの観光客が一気に押し寄せ、8時台には行列ができ始めます。

> **裏技:** 6時15分〜6時45分が「黄金の30分」です。待ち時間ゼロ、できたての一杯目の味噌汁、そして市場の朝の空気。これは早起きした人だけの特権です。

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## 失敗しない実践ガイド|席の選び方・混雑の波・現金事情

まず支払いについて。きくよ食堂はクレジットカード対応済みですが、朝市の他の小さな店舗では現金のみという場所がまだ多く残っています。朝市全体を楽しむなら、最低でも5,000円程度の現金を持っておくと安心です。

**席の選び方**は重要です。本店2階は窓際の席から朝市広場が見下ろせて雰囲気が良い反面、団体客と重なると落ち着きません。一人旅や二人旅なら、支店のカウンター席がおすすめ。調理の様子が目の前で見られます。

**混雑の波**にはパターンがあります。第一波は8時〜9時(ホテル朝食を抜いた観光客)、第二波は10時〜11時(朝市散策後の「やっぱり食べたい」層)。逆に9時15分〜9時45分は谷間になりやすく、6時台を逃した場合の次善策として覚えておいてください。

**注文時のコツ:** メニューには写真がありますが、季節によってネタが変わります。迷ったら「今日のおすすめは?」と聞くのが確実。英語メニューもあります。

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## 朝市周辺の地元式朝さんぽ|食後に寄りたい市場の裏側

きくよ食堂を出た後、観光客の多くはそのまま朝市内を一周して終わります。でも地元民の朝はもう少しだけ続きます。

まず向かいたいのが「えきに市場」。朝市のメインエリアから徒歩1分、JR函館駅寄りにある小さな市場です。観光客密度が一気に下がり、干物や昆布を地元価格で買えます。真昆布の切り落とし(500円前後)はお土産として軽くて優秀。

食後の腹ごなしには、朝市から海沿いに5分ほど歩いてみてください。函館港の岸壁に出ると、摩周丸(旧青函連絡船・記念館、入館500円)が静かに停泊しています。朝の海風を浴びながら甲板に立つと、かつて本州と北海道を結んでいた航路の記憶が体感できます。開館は8時半からなので、朝食後のタイミングにぴったりです。

> **地元の豆知識:** 朝市エリアの東側、市場の裏手にあたる小路を歩くと、仲買人向けの「まかない系」の小さな食堂や喫茶店が点在しています。看板が出ていないことも多いですが、コーヒー一杯300円の世界がまだここには残っています。函館朝市の「もう一つの顔」を見たいなら、表通りではなく裏手を歩いてみてください。

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*朝市は生き物です。季節や漁の状況で値段もネタも変わります。この記事の価格は2024年時点の目安としてお使いください。最新情報はきくよ食堂公式サイトや函館朝市公式サイトでご確認を。*