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松山が「日本一過小評価された城下町」と言われる理由

2026-05-08·12 分で読める
松山が「日本一過小評価された城下町」と言われる理由

# 松山が「日本一過小評価された城下町」と言われる理由

四国最大の都市でありながら、多くの訪日旅行客のルートから外れてしまう松山。大阪から広島へ新幹線で移動し、そのまま九州へ――そんな「ゴールデンルート」の隙間に、この街は静かに佇んでいます。地元の人に聞くと、決まってこう返ってきます。「来た人はみんな好きになるんよ。ただ、来んのよね」と。この記事では、松山に4年間通い詰めた筆者が、観光ガイドに載らない本当の魅力をお伝えします。

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## 観光客が素通りする松山——なぜ地元民は「過小評価」と嘆くのか

理由はシンプルで、アクセスの「見かけ上の悪さ」です。実は松山空港から市内中心部までバスでわずか20分、運賃は片道700円。成田・羽田・関西空港からLCCのジェットスターが就航しており、早期予約なら片道4,000円台で飛べることも。それなのに「四国=遠い」という先入観だけで候補から消えてしまう。京都や大阪のような混雑は皆無で、松山城の天守閣に立っても周囲に観光客は数えるほど。人口50万人規模の街にミシュラン掲載店、現存天守、日本最古級の温泉が徒歩圏内に集まっている場所は、日本広しといえどもここだけです。地元民が「過小評価」と嘆く気持ち、来ればすぐにわかります。

> **地元の豆知識:** 松山空港の愛称は「松山空港〜愛よ来い(I.YO.KO.I)空港」。伊予(愛媛の旧国名)と「愛」をかけた、松山らしいユーモアです。

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## 松山城だけじゃない:路面電車で巡る地元民の日常ルート

松山の路面電車(伊予鉄市内電車)は1回200円均一。1日乗車券は800円ですが、地元民の多くはICカード「ICい〜カード」を使っています。観光客にもおすすめしたいのは、あえて**環状線(1番・2番系統)を1周乗り通す**こと。所要約40分で、松山の街の空気感をそのまま浴びることができます。JR松山駅前から乗り、南堀端で松山城の石垣を見上げ、上一万の住宅街を抜け、道後温泉駅で下車——これが定番。でも地元民が愛するのは、実は**本町線(5番系統)**。観光客はほぼゼロ。古い木造家屋の間を電車がすり抜ける風景は、昭和の日本そのものです。本町六丁目の終点まで乗って、そのまま折り返すだけで十分な価値があります。車窓から見える個人経営の豆腐屋や古い理髪店は、東京では消えてしまった日本の原風景です。

> **裏技:** 伊予鉄の路面電車は後方ドアから乗車・前方ドアで降車。降車時にICカードまたは現金200円を運賃箱へ。両替機は車内前方にありますが、1,000円札までしか対応していないので事前に小銭の準備を。

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## 道後温泉の「観光客が行かない方」の楽しみ方と地元銭湯文化

道後温泉本館は2024年に保存修理が一段落し、全館利用が再開しています。入浴料は「神の湯」が700円から。ただし、週末は待ち時間が1時間を超えることも。地元民はどうするか? **すぐ隣の「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」**に行きます。入浴料610円で、本館より空いている上に、飛鳥時代の建築意匠を再現した浴室は圧巻。特別浴室(1,690円・要予約)では、個室で茶菓子付きの贅沢な湯浴みが体験できます。さらにもう一つ、地元民だけが知る場所があります。道後温泉駅から徒歩5分の**「セキ美術館」**裏手にある足湯は無料で、観光客はほぼ来ません。そして本当のローカル体験をしたいなら、市内各所に点在する銭湯へ。**「石手川緑地」沿いの「喜助の湯」**は天然温泉で大人650円、深夜1時まで営業。路面電車を降りてから夜の温泉という贅沢が、松山では日常なのです。

> **地元の豆知識:** 松山では温泉に入ることを「お湯に浸かりに行く」ではなく、地元の方言で**「おゆにいこわい(お湯に行こう)」**と言います。道後周辺で「ゆ」の暖簾を見かけたら、観光施設ではなく地元民の生活の一部です。

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## 商店街の奥にある名店——地元民が通う味と夜の三番町の歩き方

松山最大のアーケード商店街「大街道(おおかいどう)」は全長約500m。ただし地元民の行きつけは、アーケードの裏路地に隠れています。まず押さえたいのが**「鍋焼きうどん アサヒ」**(大街道から徒歩3分)。アルミ鍋で提供される甘めの出汁のうどんは松山のソウルフード。1杯580円、メニューはこの1品のみ。昼の12時を過ぎると売り切れることも多いので、11時半到着を目指してください。夜は大街道と平行する**「三番町通り」**へ。地元サラリーマンの聖地です。**「野志よし」**では瀬戸内の地魚刺身盛り合わせ(1,500円前後)が絶品。愛媛名物の「じゃこ天」は練り物の概念が覆る旨さで、1枚200円程度で立ち飲みの店先でもつまめます。〆には三番町の外れにある**「三津浜焼き」**の店を探してみてください。広島風お好み焼きに似ていますが、クレープ状の薄い生地にそばを挟むスタイルで、松山っ子はこれを「お好み焼き」とは絶対に呼びません。1枚600〜800円。

> **裏技:** 三番町では、入口に「瓶ビール350円」などの手書き看板がある小さな店ほど当たりの確率が高い。地元のお客さんが8割以上の店を見つけたら迷わず入ってください。カウンター5席だけの店で隣のおじさんに話しかければ、ガイドブックには絶対に載らない松山情報が手に入ります。

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## 松山を拠点にした瀬戸内ローカル旅の組み立て方

松山の最大の隠れた強みは「瀬戸内ハブ」としての立地です。松山観光港からフェリーで広島へ渡れば所要約2時間40分(スーパージェットなら1時間10分・片道7,500円)。つまり広島〜松山をフェリーで繋げば、瀬戸内海を横断する旅が新幹線より安く、はるかに印象的になります。もう一つ、旅慣れた人に強くすすめたいのが**「JR予讃線の海回り区間」**。松山から八幡浜方面へ向かうローカル列車は、下灘(しもなだ)駅を通ります。ホーム直下に海が広がるこの無人駅は、日本で最も海に近い駅の一つ。松山駅から約50分、片道860円で到着します。日帰りで往復しても半日で収まるので、午前中に下灘駅、午後に道後温泉という組み合わせが可能です。さらに松山から特急で約40分の**内子(うちこ)**は、江戸〜大正期の町並みが残る小さな宿場町。観光客の少なさは松山以上で、まさに「タイムスリップ」体験ができます。

> **裏技:** 「松山・広島割引きっぷ」はJR・フェリー・路面電車がセットで大人6,200円(2日間有効)。広島の宮島まで含めて使えるので、しまなみ海道を自転車で渡る予定がない方には最もコスパの良い移動手段です。購入はJR松山駅の窓口またはJR広島駅で。

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**最後にひとこと。** 松山は「頑張って売り込む」タイプの観光地ではありません。その控えめさこそが、過小評価の原因であり、同時にこの街最大の魅力でもあります。来ればわかります。そして、帰りたくなくなります。