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作並温泉――仙台市民が週末にこっそり通う秘密の湯治場

2026-05-08·10 分で読める
作並温泉――仙台市民が週末にこっそり通う秘密の湯治場

# 作並温泉――仙台市民が週末にこっそり通う秘密の湯治場

「仙台から温泉に行くならどこ?」と地元の人に聞くと、多くの人は秋保温泉を挙げるでしょう。でも、もう少し仲良くなってからもう一度聞いてみてください。声をひそめて「……本当は作並のほうが好きなんだよね」と打ち明けてくれるかもしれません。この記事は、そんな仙台市民の"こっそり推し"を、惜しみなくお伝えするものです。

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## 仙台市民が作並を「自分だけの温泉」にしたがる理由

作並温泉は仙台駅から西へわずか約40分の山あいにあります。知名度の高い秋保温泉と比べて観光バスが少なく、広瀬川上流の渓谷沿いにひっそりと宿が点在する静かな温泉地です。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉で、肌にやわらかく「美肌の湯」として知られています。仙台市民にとっての魅力は「わざわざ遠出した感があるのに、実は近い」こと。金曜の仕事帰りにふらっと一泊し、翌朝の露天風呂で渓流の音を聴きながらぼーっとする——そんな贅沢が日常の延長線上にあるのです。観光地化されすぎていないからこそ、「ここは教えたくない」と思わせる空気感が残っています。

> **地元の豆知識:** 作並は正岡子規や土井晩翠など文人たちにも愛された歴史ある湯治場。開湯は奈良時代の721年とも伝わり、実は東北でも屈指の古湯です。

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## JR仙山線で行くのが正解——車窓の渓谷美と途中下車の裏ワザ

作並へは車でも行けますが、断然おすすめなのはJR仙山線です。仙台駅から作並駅まで片道約590円、所要約40分。愛子(あやし)駅を過ぎたあたりから車窓が一変し、広瀬川の渓谷が眼下に広がります。特に紅葉の時期はトンネルを抜けるたびに錦絵のような景色が現れ、思わずカメラを構えてしまいます。作並駅に着いたら、主要旅館の無料送迎バスが待っているので迷う心配もありません。

> **裏技:** 往路で一つ手前の「熊ヶ根駅」で途中下車してみてください。ホームから見える熊ヶ根鉄橋と渓谷の眺めは、鉄道ファンの間では有名な隠れ絶景スポット。次の電車まで約30〜50分あるので、写真を撮ってから作並へ向かうのにちょうどいい時間です。仙山線はSuica・PASMOが使えるので途中下車も気軽にできます。

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## 宿選びの本音:老舗旅館の日帰り湯vs知る人ぞ知る小さな湯宿

作並の代表格は「鷹泉閣 岩松旅館」。渓流沿いに天然岩風呂が並ぶ圧巻のロケーションで、日帰り入浴は大人1,320円(2024年時点)。混浴岩風呂を含む複数の湯殿を巡れるので、半日かけてゆっくりしたい人向きです。もうひとつの老舗「La楽リゾートホテル グリーングリーン」は日帰り入浴880円からとリーズナブルで、広々とした大浴場が魅力。一方、地元民が静かに推すのが「作並ホテル」や「ゆづくしSalon一の坊」。一の坊はオールインクルーシブ(1泊2食付き約18,000円〜)で、ラウンジのドリンクやスイーツまで宿泊料に含まれています。「何も考えず、ただ温泉とごはんを繰り返す」という湯治の本質を味わうなら、一泊して初めてわかる良さがあります。

> **地元の豆知識:** 岩松旅館の天然岩風呂へは、館内からエレベーターで渓谷の底まで降りていきます。初めてだと「本当にこの先にお風呂が?」と不安になりますが、それが冒険感があって楽しいのです。

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## 湯上がりに寄りたい地元民御用達の蕎麦屋と酒蔵カフェ

湯上がりの空腹を満たすなら、作並駅から仙台方面へ一駅戻った愛子エリアが穴場です。「そば処まるまつ愛子店」は手頃ですが、通が向かうのは作並街道沿いの手打ちそば店。「蕎麦処 つたや」では地元のそば粉を使った十割蕎麦(約1,000〜1,300円)をいただけます。もうひとつの楽しみが、ニッカウヰスキー仙台工場 宮城峡蒸溜所(入場無料・要予約)。作並駅から徒歩約25分またはシャトルバスでアクセスでき、見学後にはウイスキーの無料試飲が待っています。運転しないからこそ仙山線が正解、という理由はここにもあります。蒸溜所内のギフトショップでは蒸溜所限定ボトルも購入可能です。

> **裏技:** ニッカ宮城峡蒸溜所の見学ツアーは人気で、特に週末は早めに予約が埋まります。公式サイトから2週間前までに予約するのがおすすめです。湯上がり→蒸溜所見学→試飲、という流れは仙台市民の間で「作並ゴールデンルート」と呼ばれています。

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## 冬の雪見露天と夏の川床——季節ごとに変わるベストな過ごし方

作並の真骨頂は季節ごとの表情の違いにあります。**冬(12〜2月)** は雪見露天風呂が格別。しんしんと降る雪の中、湯けむりの向こうに白く染まった渓谷を眺める体験は、東北の温泉ならでは。気温がマイナスになるため、露天から出た瞬間に髪が凍るのもまた一興です。**春(4〜5月)** は新緑と山桜、**秋(10〜11月)** は燃えるような紅葉がピーク。特に10月下旬の仙山線は「紅葉列車」とも呼ばれる美しさです。そして意外に知られていないのが **夏(7〜8月)**。仙台中心部より3〜5℃涼しく、広瀬川の清流沿いを散策すれば天然の涼を感じられます。宿によっては川のせせらぎを聞きながらの夕涼みプランも。どの季節に来ても「また来たい」と思わせるのが、地元民がリピーターになる最大の理由です。

> **地元の豆知識:** 冬に作並を訪れるなら、仙台駅で「仙山線ワンデーパス」的なきっぷの有無を窓口で確認してみましょう。期間限定のフリーきっぷが出ていることがあり、途中下車し放題でお得に渓谷沿いの雪景色を満喫できます。

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作並温泉は、華やかな観光名所ではありません。でも、だからこそ良いのです。仙台市民が「自分だけの場所」として大切にしてきた、飾らない湯のまちの空気をぜひ味わいに来てください。きっとあなたも「ここは秘密にしておきたい」と思うはずです。