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函館元町の裏路地|観光客が見落とす西の丘の素顔

2026-05-09·9 分で読める
函館元町の裏路地|観光客が見落とす西の丘の素顔

# 函館元町の裏路地|観光客が見落とす西の丘の素顔

## 観光地化されていない元町の現在地

函館を訪れた多くの旅行者は、赤レンガ倉庫や異国情緒あふれるメインストリートで写真を撮ります。でも地元民が本当に大切にしている元町は、その一本奥にあります。

元町は江戸時代から昭和にかけて栄えた港町。今も古い洋館やビジネスホテルが混在し、観光地としてリノベーションされていない「生きた町」のままです。観光客の90%がメインストリートから先に進まないため、裏通りには地元の日常がそのまま残っています。

実は元町全体が「日本遺産」に認定されているのに、その価値を知らない訪問者は多い。派手さはありませんが、ここに函館の本質があるんです。

## メインストリートの向こう側へ、裏通りの小さな食堂と酒場

元町十字街から一本南に入ると、別世界です。狭い通りに密集する小さな飲食店——それが本当の函館グルメ。観光地化された店ではなく、40年以上同じ常連客を相手にしてきた食堂たちです。

「食堂 弁慶」(末広町)では、朝5時からスープカレー(950円)を提供。漁師や早朝勤務の地元民が黙々と食べます。このカレーは観光ガイドに載っておらず、Google評価も少なめ。だからこそ本当の味が守られているんです。

夜は「立ち飲み 若松」(大手町)へ。ビール中ジョッキ500円、焼き鳥串150〜200円。カウンター5席のみ。老舗の親父が「こいつ、初めてか?」と塩辛い話題で絡んでくる。これが函館の夜です。

> **地元の豆知識:** 函館の繁華街は昭和40年代まで「元町」でした。現在の五稜郭・すすきの地区に客層がシフトしたため、元町は「かつての栄光の町」のままです。その分、当時の建物が適度に保存されています。

## 地元客に愛される味わい、古い建物が息づく路地

路地裏の食堂の外観は一見ボロボロです。でもそれは修復されていないのではなく、**修復の必要がないほど頑丈だから**。明治・大正の建物は現代の安い建材より優れています。

「蕎麦処 大門」(元町)の暖簾をくぐると、木製カウンター、天井の低さ、年季の入った壁——すべてが時間の証人です。天ぷら蕎麦850円。観光客向けの洗練さはなく、地元の80代が「いつもの」と注文します。

居酒屋「梅川」(大手町)の奥の席から見える裏路地の景色は、写真に撮れない種類の美しさです。ここで90年近く営業しています。刺身盛り合わせ(1,500円)は函館朝市の仕入れそのもの。

> **裏技:** 多くの老舗は夕方4時から営業開始。昼間の観光は避け、16時以降に訪れると確実に席が空いています。昼間しか時間がない場合は、お店の人に「明日も来たい」と言いながら帰ると、次回の訪問で「前日の方ですね」と覚えていてくれます。

## 明治・大正の痕跡を歩く、坂道散歩

元町最大の特徴は「坂の町」であること。港に向かって緩やかに下る地形が、自然と路地を生み出しました。

メインストリートの「八幡坂」は観光地化されて人が多いですが、その左隣の「相馬坂」「弁天坂」はほぼ地元民のみ。石段を上ると、明治時代の洋館がぽつぽつと現れます。

特に見落とされているのが「大手町方面の坂道群」。ここは実際に人が住んでいる民家が立ち並び、途中に「函館高田屋嘉兵衛資料館」(入館料200円)があります。派手さはありませんが、江戸時代の蝦夷地交易史が凝縮されています。

歩くなら朝8時から10時が最適。昼の雑然さが消え、坂道が清々しく見えます。

## 西の丘の高さがもたらす景色と静けさ

元町は函館山の西側に位置するため、港を見下ろす視点が自然に得られます。観光客が函館山ロープウェイで写真を撮る景色を、路地裏から無料で見られるんです。

特に「相馬坂の途中」からの眺めは秀逸。朝日が港の入り口「津軽海峡」を照らします。この瞬間、観光客が一人もいません。

「古い家 café」(末広町)の2階テラスからの夕日(コーヒー550円)も穴場。観光ガイドに載らない場所で、地元の学生が勉強しています。

## 訪れるなら知っておきたいこと|混雑を避け地元の時間に合わせる

元町を本当に楽しむには、**観光客の時間帯を避けること**が必須です。午前10時〜午後3時は避け、早朝か夕方以降に訪れてください。

アクセスは市電「末広町駅」が便利(函館駅から3駅、170円)。レンタサイクル(1日600円)も地元民に人気。坂が多いので、電動アシスト付きがおすすめです。

天気は二転三転しやすいので、折り畳み傘は必携。函館の雨は「霧雨」が多く、一見晴れているのに湿っています。靴は歩きやすいものを——古い石畳の路地は足首に負担がかかります。

最後に、元町は「見せる場所」ではなく「地元民が暮らす場所」です。写真は少なめに、耳と鼻と肌で感じることをお勧めします。そうするとこの町の本当の顔が見えてきますよ。